2003年ごろに盲目のサックス奏者ウォルフィー佐野とはじめた、地下室での暗闇ライブは、その後ソロピアノによる即興暗闇演奏「ディープリスニング」ライブへと移っていった。
2005年にティク・ナット・ハンの著書『禅的生活のすすめ』に出会い、マインドフルネスと瞑想の実践を独自にはじめた。
2007年に安納献くんよりNVC(=Nonviolent Communication/非暴力コミュニケーション)を紹介され、教わり、練習しはじめた。
2011年、音読療法協会設立。
東北の被災地をはじめ、高齢者福祉施設、学校、病院などをまわっているが、機会をとらえてピアノ演奏もまじえている。
音楽には情動に直接働きかける強い力もあれば、非言語的な瞑想世界へと誘導する力もある。
とくに聞きなれないメロディやハーモニーは、記憶や思考をうながすことなく、聴感覚をとおして感覚体としての自分自身の存在そのものに気づく手助けができる。
そのようなことがわかってきたので、今年2015年にはいってから私は積極的に音楽瞑想のイベントを展開している。
明大前〈キッド・アイラック・アート・ホール〉は以前から現代朗読の公演でホールを、沈黙の朗読のライブで地下のブックカフェ〈槐多〉をよく利用していたが、音楽瞑想は3階のギャラリースペースでおこなっている。
ここにアップライトのピアノがやってきたのは、今年2月のことだ。
非常にすぐれた音響空間で、ピアノは「響きすぎる」くらいによく響く。
うっかり無自覚に音を重ねてしまうと、音が重なりすぎて、ゴテゴテに絵の具を重ねすぎた油絵のようになってしまう。
今回の公演では、それを逆手にとって、オープニングのピアノ演奏でわざと多くの音を重ねて、わんわんと空間を鳴らしてみた。
これはギャラリーで展示中の広河隆一さんの写真に触発されて出てきた音なのかもしれない。
私のピアノソロにつづいて、現代朗読の野々宮卯妙が朗読をスタート。
今回のテキストは彼女の大学時代の卒論だかゼミだかのテーマだったという、九鬼周造の『いきの構造』の冒頭部分。
哲学書であるから、ストーリーはなく、ことばや論理も難解で、通常の朗読鑑賞にはあまり向かないテキストといえるだろう。
そこが逆にねらいなのだという。
沈黙の朗読というパフォーマンスにおいては、なかなか効果的だったのではないかと思う。
パーカッションがいくつか、カリンバ、笛、ベル、おもちゃのハーモニカなど。
ピアノ演奏のほかにも、これらを使って朗読にからんだり、手拍子や口笛、足踏み、ピアノ叩きまで動員して、いろいろ遊んでみた。
いやいや、楽しい。
幅3センチしかないマイクロハーモニカが、意外におもしろい味を出してくれた。
また持っていこう。
前半はそうやって、しだいに沈黙にむかっていく賑やかな朗読。
まんなか部分で完全に沈黙にいたり、そして照明は暗転。
まっくらななかで、後半の音楽瞑想がスタート。
あとは自分でも「いまこの瞬間」しかとらえていない、濃いマインドフルの状態での瞑想的演奏が、たぶん30分くらい?
終わってから、用意してきたワインやつまみを出し、ご来場のみなさんとゆっくりとおしゃべりさせていただいた。
ゆったりと楽しい時間がすぎていった。
おいでいただいたみなさん、ありがとう。
次回のこの公演は6月26日(金)夜を予定している。
今回来られなかった方も、来られた方も、どうぞお越しください。
6月公演の詳細と申し込みはこちら。
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