5月にスタートしたオーディオブック収録製作コースの今期全10回が、この木曜日で終わった。
参加者は毎回4、5名と少人数で、その分、充実した10回だったのではないかと感じている。
最終回は、夜になっても羽根木の家が蒸し暑く、ちょっとゆるい感じで基礎トレーニングをひととおりやったあと、簡易スタジオにそれぞれはいってもらって収録実習。
対面で読みを聴くのと、録音したものを聴くのとでは、全然印象がちがう。
それも当然で、いわば自分の部屋を肉眼でながめるのと、いったん写真に撮ってそれを観察するのくらいちがう。
録音したものは音声がすみからすみまでフラットに聞こえるので、客観的になれるのだ。
そしてそこには、朗読者の全存在が乗っかっている。
音声を聴けば、読み手のありよう、心理状態、たくらみ、すべてのことが手に取るようにわかる。
というようなことを、みんなであらためて確認し、基礎トレーニングの重要性を再確認したのだった。
じつをいうと、基礎トレーニングや現代朗読のエチュードに対して、最初は疑念を持つ者が多い。
「こんなことやってなんかなるの?」
「こんなんで朗読がうまくなったりする?」
そして、私がいっていることも半分も理解できないらしい。
それはそうだろう、朗読教室や講座や養成所で使われているのとはまったく異なる言語体系なので、最初はなにをいっているのかさっぱりわからないと思う。
しかし、この言語体系でしか伝えられないことがあるので、やむをえない。
私が3年前に韓氏意拳をはじめたときもそうだった。
教練がなにをいっているのか、さっぱりわからなかった。
そして自分がなにをどうすればいいのか、途方にくれてしまったものだ。
しかし、自分の理解できないその向こう側には「なにかある」という直感があり、食いついていった。
すると、すこしずつ言語が身体にはいってくるようになった。
現代朗読もそうで、わけがわからないといって遠ざけたり、去っていってしまう人も多いなか、食いついてくる人もいる。
そういう人たちがこの木曜日まで残っていたわけだが、とくにゼミ生になって食いついてきた人たちの表現クオリティの向上のめざましさといったら、それはすばらしいのだ。
もちろん、人それぞれのペースはあるし、理解と練習の深さも異なるのだが、方向性さえ見つけられたらあとは自分でやれることだ。
いずれにしても、「いまここ」や「ライブ感」を重視している現代朗読だが、収録も楽しいよね、という話になり、次期の全10回コースも楽しみなのだ。
あたらしく参加する人もいる。
また、定員にはまだまだ余裕があるので、興味がある方は申し込みしていただくか、気がかりなことがあれば遠慮なく問い合わせてみてほしい。
(現代朗読協会主宰・水城ゆう)
※次期オーディオブック収録製作コース全10回は、8月6日(木)夜にスタートします。詳細はこちら。
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